トイレで用を足したら、尿が赤い——。
痛みがないと「疲れかな」「様子を見よう」と考えてしまいがちですが、実は痛みのない血尿こそ、注意が必要なサインであることをご存じでしょうか。
この記事では、日々の診療で血尿の相談を受けている医師の立場から、
- 血尿にはどんな種類があるのか
- 痛みのない血尿がなぜ要注意なのか
- 考えられる主な原因
- 受診の目安と、病院で行う検査
を、できるだけわかりやすく解説します。
⚠️ この記事は一般的な医学情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療を行うものではありません。血尿が出た場合は、必ず医療機関を受診してください。
血尿には2つの種類がある
血尿は大きく2つに分けられます。
- 肉眼的血尿:見た目で赤い・茶色いとわかる血尿
- 顕微鏡的血尿:見た目は普通でも、検査で血液が混じっているとわかるもの(健康診断の「尿潜血陽性」はこちら)
どちらも放置してよいものではありませんが、特に目で見てわかる血尿が一度でも出た場合は、そのあと自然に消えたとしても受診が必要です。
「痛くない血尿」がむしろ要注意な理由
意外に思われるかもしれませんが、血尿は痛みの有無で意味合いが変わります。
- 痛みを伴う血尿:膀胱炎や尿路結石など、炎症や結石が原因のことが多い
- 痛みのない血尿:膀胱や腎臓・尿管の腫瘍(がん)が隠れている可能性を必ず考える必要がある
膀胱がんの代表的な初発症状は、「痛みのない肉眼的血尿」です。しかも血尿は出たり止まったりすることがあり、「止まったから治った」と思って受診が遅れるケースが少なくありません。
痛くないから安心、ではなく、痛くないからこそ一度調べる——これが大原則です。
血尿の主な原因
血尿の原因はさまざまです。代表的なものを挙げます。
痛みを伴うことが多いもの
- 膀胱炎:排尿時の痛み、頻尿、残尿感を伴う。女性に多い
- 尿路結石:背中やわき腹の激しい痛みを伴うことが多い
痛みを伴わないことが多いもの
- 膀胱がん・腎盂尿管がん:喫煙が最大の危険因子。中高年男性に多い
- 腎臓の病気(腎炎など):健診の尿潜血・尿タンパクで見つかることが多い
- 前立腺肥大症(男性):尿が出にくい症状を伴うことがある
その他
- 激しい運動のあとに一時的に出るもの
- 女性では月経血の混入(血尿と紛らわしい)
- 薬や食べ物で尿が赤く見えることもある(ビーツなど)
このように原因は幅広く、自己判断で見分けることはできません。
受診の目安:何科に行けばいい?
次のいずれかに当てはまる場合は、泌尿器科の受診をおすすめします。
- 一度でも目で見てわかる血尿が出た(痛みがなくても、その後止まっても)
- 健康診断で尿潜血陽性を指摘された(特に2年連続や、40歳以上・喫煙歴のある方)
- 血尿に加えて、排尿時の痛み・頻尿・尿の出にくさがある
「もう出ていないから」「痛くないから」と受診を先延ばしにするのが、いちばん避けたいパターンです。膀胱がんは早期に見つかれば内視鏡での治療が可能なことも多く、早く調べるメリットは非常に大きいのです。
病院ではどんな検査をするの?
血尿で受診した場合、主に次のような検査を組み合わせます。いずれも外来でできるものがほとんどです。
- 尿検査:血尿の程度や、感染・タンパクの有無を確認
- 尿細胞診:尿の中にがん細胞が混じっていないかを調べる
- 超音波(エコー)検査:腎臓・膀胱を痛みなく観察できる
- 膀胱鏡検査:細いカメラで膀胱の中を直接確認する。膀胱がんの診断に最も確実
- 必要に応じてCTなどの画像検査
「膀胱鏡」と聞くと身構える方が多いのですが、現在はやわらかい細いカメラが主流で、検査は数分で終わります。
よくある質問
Q. 血尿が一度出ただけで、今は止まっています。受診すべきですか?
A. はい。血尿は出たり止まったりすることがあり、止まったことは「治った」ことを意味しません。一度でも肉眼的血尿が出たら受診してください。
Q. 健診で尿潜血陽性でしたが、症状は何もありません。放置してよいですか?
A. 放置はおすすめしません。多くは心配のないものですが、腎臓の病気や腫瘍が隠れていることがあり、一度は精密検査(尿の再検査・エコーなど)を受ける価値があります。
Q. 何科に行けばよいですか?
A. まずは泌尿器科が適切です。健診で尿タンパクも一緒に指摘された場合は、腎臓内科が適していることもあります。
まとめ
- 血尿には「見てわかる血尿」と「検査でわかる血尿」がある
- 痛みのない血尿は、膀胱がんなどの腫瘍を必ず考えるべきサイン
- 一度でも肉眼的血尿が出たら、止まっても・痛くなくても泌尿器科へ
- 検査は外来で受けられるものがほとんど。早く見つかるほど治療の選択肢は広い
「痛くないから大丈夫」ではなく、「痛くないからこそ、一度だけ調べる」。その一歩が、将来の自分を守ります。

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